コラム

「注目される力」─ホーソン効果と組織の可能性

ウェブ戦略コンサルタント

小野瀬 友樹

「どんなに環境を整えても、人の心が動かなければ成果は出ない。」

経営や組織運営に携わってきた中で、何度となくその言葉を実感する場面がありました。

そしてそのたびに思い出すのが、「ホーソン効果」です。
 

ホーソン効果とは

1920年代のアメリカ。ウェスタン・エレクトリック社のホーソン工場では、作業環境の変化が生産性にどう影響するかを検証する研究が行われました。
照明を明るくすれば生産性が上がる──そんな仮説を立てて始まった実験。

しかし、照明を暗くしても、生産性は上がったのです。

この一見矛盾した結果から導かれたのが、「ホーソン効果」と呼ばれる心理的現象です。
人は、自分が注目されている・期待されていると感じると、その期待に応えようと無意識に努力し、仲間と協力しあうようになります。

単なる作業条件の変化以上に、「見られている」「期待されている」という心理的な要因こそが、行動に影響を与えることがわかったのです。
 

ホーソン効果の示唆

この研究が示唆したのは、次の4点です。

  1. 感情と行動は切り離せない。
  2. 人は集団の中で影響を受けながら動く。
  3. その集団が持つ“基準”が、行動や成果を左右する。
  4. お金よりも、承認や安心感のほうが行動の動機になる。

 

 

① 感情と行動は切り離せない

ホーソン工場での実験では、照明を明るくしたり暗くしたり、休憩時間を変えたりしても、必ずしもその通りに生産性が変わるわけではありませんでした。
ところが、研究者や上司が「関心を持ってくれている」「注目してくれている」と感じるだけで、作業者のやる気が高まり、成果が出たのです。つまり、気持ちが動けば行動も変わるということです。

注目・期待によって感情が動き、生産性が向上したという点が、ホーソン効果の本質です。

② 人は集団の中で影響を受けながら動く

ホーソン実験の一部では、作業者たちが自然と“このくらいのペースでやろう”という暗黙のルール(非公式な基準)を共有していました。
そのルールに従って、誰かが極端に速く作業をすると、他の仲間から「やりすぎだよ」と注意されるようなこともありました。

これは、人は単独ではなく、周囲の人との関係性の中で行動を調整していることを意味します。
「仲間と足並みを揃えよう」という行動が自然に起きるのです。

これはホーソン効果の定義ではありませんが、「非公式組織」や「集団規範」の話であり、ホーソン研究での重要な副次的発見のひとつでした。

③ その集団が持つ“基準”が、行動や成果を左右する

作業のスピードや質は、会社のルールや上司の指示だけで決まるわけではありません。
実は、その現場で共有されている「当たり前」や「これくらいでいいよね」という感覚が、大きな影響を与えています。

こうした“集団の基準”は、無意識のうちに一人ひとりの行動を方向づけ、結果として全体の生産性や雰囲気をつくっていきます。

つまり、人は「何を期待されているか」だけでなく、「周りがどうしているか」によっても動くのです。

④ お金よりも、承認や安心感のほうが行動の動機になる

「給料を上げれば人は頑張る」と思われがちですが、ホーソン研究ではそれ以上に、「自分は必要とされている」「ここにいていいんだ」と感じることが、行動のモチベーションにつながることが分かりました。

つまり、人はお金だけではなく、承認・信頼・人間関係といった“心理的な報酬”によって、本気を出すことわかってきました。

これは後に整理された動機づけ理論(ハーズバーグ、マズロー)に近い考えであり、ホーソン効果そのものではありませんが、ホーソン研究の一つの副次的成果でもあります。

 

ホーソン効果からの気づき

もちろん、この研究は、1920年代で実施されているもので、知的産業の重要性が増しつつある昨今では、当てはまらないこともあるでしょう。
しかしながら、人間が機械のロジックで必ずしも生産性を上げることができないという、重要な発見つながっています。

この効果は私たちが大切にしている「信じて、託し、尊重する」理念にも通じる点があります。

人は機械ではなく、感情を持つ存在です。

働く理由も成果を出す理由も、「誰かに期待されている」「仲間に必要とされている」といった心の動きが根本にあります。

だからこそ、リーダーやマネージャーの役割は、メンバーを管理することではなく、信頼し、見守り、良い注目を向けることなのだと思います。

テクノロジーが進化し、リモートワークが広がり、人との接触が希薄になりつつある今だからこそ、「注目されること」の意味は、より一層重要性を増しているような気がしてなりません。

私たちグラタスは、「人間を中心に」おきながら、クライアント企業とともに、企業や人の価値向上につながる戦略づくりを進めております。

グラタスは、広告運用力・サイト改善力・データ分析力という強みを活かし、
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この記事を書いた人

ウェブ戦略コンサルタント

小野瀬 友樹

ウェブマーケティング戦略コンサルタント。コンサル実績:月間1000万PV/問い合わせ数約6倍/売上10倍など。企業ブランドが発信すべきメッセージを企画し、広告/SEO/サイト改善を活用して実現する。ウェブ解析士マスター。

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