コラム

市場浸透率が効率化のカギ?ダブルジョパディ法則

代表取締役

小野瀬

ウェブ戦略への認識

企業のウェブ戦略について多くのご相談を受ける中で、ウェブ戦略に関する誤解をとくことからはじめることは意外と多いです。

特に多いのは、広告費と成果は簡単に比例するという思い込みや、少額予算で成果がでなければ予算を増やしても見込みがない、といった主旨の誤解です。
前者は、広告費を増やせば増やすほど、成果も同じように増えると思い込んでいますし、後者は少額の広告ですべてが分かるという誤解をしています。

ただ、ややこしいことにこれら考え方は、ビジネスの進める上では、効果の試算やリスクヘッジとして基本となる重要な考え方であり、テストマーケティングはマーケターが実践する基本中の基本です。

しかしながら、実際のところはウェブ広告はそれほどシンプルではありません。
これは10年前には主流をなしていた4マス媒体での広告とは違ってウェブ広告は効果計測が可能である。という強い印象ががかえってそうした誤解への助長をしているのかもしれません。

10年以上、合計100以上の企業のウェブ戦略に真摯に携わってきたものとして、経験則から少なくても断言できることは、ウェブ戦略においても、広告費と成果の関係が直線を描いて比例する単純なものではなく、その他の多くの要素が複雑に絡み合いながら曲線を描くものです。

そこで今回は、このような誤解を少しでも解消して頂けるように、マーケティングの世界で広く認識されている一つの法則、ダブルジョパディ法則をご紹介します。

この法則を理解することで、広告費と成果の関係についてひとつの理解を得ることができるのではないかと期待をしています。

ダブルジョパディ法則とは

まず、ダブルジョパディ法則の簡単な説明をします。

“Double Jeopardy”の直訳は「二重の危険」または「二重の困難」です。

この表現は、法律の文脈では「二重起訴(Double Jeopardy)の禁止」といったように禁止をする目的で使用されているようです。
つまり、同じ罪で二度裁判にかけられることはない、という原則を指します。

しかし、マーケティングの文脈では、”Double Jeopardy”は二重の危険にさらされる法則を指します。
それは、市場浸透率が低いブランド(つまり、消費者の一部しか購入していないブランド)は、購入頻度も低い傾向にあるという法則です。

この法則は、ブランドが一つの「危険」(市場浸透率の低さ)に直面している場合、それは通常、二つ目の「危険」(購入頻度の低さ)にも直面しているという事実を示しています。

そうした由来から、”Double Jeopardy”と名付けられているようです。

ダブルジョパディ法則の詳細

この法則が何であるか、どのように発見されたか、そしてそれがどのように機能するかについて説明します。

ダブルジョパディ法則は、マーケティングの領域で広く認識されている現象で、ブランドの市場浸透率(つまり、特定の期間にブランドを購入した消費者の割合)が低いと、そのブランドの購入頻度も低くなるという法則を指します。

この法則は、1960年代に英国の社会統計学者であるアンドリュー・エーレンバーグ氏らによって発見され、彼らはさまざまな製品カテゴリーと市場にわたる消費者の購買行動を調査し、この一貫したパターンを見つけ出しました。

それは、市場浸透率が低いブランドは、購入頻度も低い傾向があり、逆に、市場浸透率が高いブランドは、購入頻度も高い傾向があるということです。

市場浸透率は、特定の期間(例えば1年間)にブランドを購入した消費者の数を全消費者の数で割り、パーセンテージで表したもので、全消費者の数は、そのブランドの製品を購入する可能性がある全ての消費者を指します。

一方、購入頻度は、特定の期間にブランドを購入した消費者がその期間中に何回そのブランドを購入したかの平均値です。

浸透率と購入頻度の因果関係について

この法則は、広範な市場とカテゴリーにわたる経験的な観察に基づいており、ブランドの市場浸透率(消費者の一部がブランドを購入する)と購入頻度(そのブランドを購入する消費者がどれくらい頻繁に購入するか)の間に強い相関関係があることを示しています。

ただし、注意が必要な点は、これは相関関係であり必ずしも因果関係を示すものではないということです。

つまり、市場浸透率が低いからといって、それ自体が必ずしも直接購入頻度が低い原因となるわけではありません。

他の要因、例えばブランドの認知度、製品の品質、価格、他者からの情報などが、市場浸透率と購入頻度の両方に影響を与える可能性があるということです。

ダブルジョパディ法則の事例適用

ダブルジョパディの法則が相関関係がだからといって、マーケティング上、活用できないわけではありません。
それはむしろ、この関係性を理解し、それを戦略に活用することの重要性を示しています。

ウェブ戦略においても、ダブルジョパディ法則は有用な視点を提供してくれています。この法則は、伝統的なマーケティングだけでなく、ウェブマーケティングにも適用できると考えられます。

私の経験では、自社ウェブサイトの特定カテゴリーでの検索トラフィックが競合他社に比べて優れている場合、広告を含む全てのコンバージョンが効率的に増加する傾向があります。これは、市場浸透率(この場合、検索トラフィックのシェア)が高いウェブサイトは、購入率(この場合、コンバージョン率)も高いという、ダブルジョパディ法則の原則を示しています。

もちろん、現実のダブルジョパディの法則と同様に、その他の要因、つまり、複数の口コミを見てからサイトに訪れている可能性が高くなったとか、あらゆる検索ワードで検索した結果に表示されるため、接する回数が増えたなどの要因が関係していると考えられます。

しかし、俯瞰してみれば、まさにダブルジョパディの法則が示す相関関係になっているわけです。

これは、特定のカテゴリーにおいて、ウェブサイトが多くのトラフィックを獲得するほど、そのウェブサイトがより多くのコンバージョンを生み出す可能性が高まるということを示しています。

この理解は、ウェブ戦略の計画と実行において、大いに役立つアイデアを提供していると考えられます。

戦略的なインプリケーション

ここまでダブルジョパディ法則を理解していくと、鋭い方なら、ウェブ戦略、ウェブ広告、SEO、コンテンツマーケティング、ソーシャルメディア戦略などにどのように影響を与えるかが見えてくるはずです。

ただし、ここで注意してほしいのは、決して、「ダブルジョパディがあるからスモールスタートすべきではない」ということを言いたいわけではないということです。

当然、ビジネスは財務的な戦略を立てた上での意思決定となりますし、何より、リスクをヘッジしながら市場を拡大してくという考え方は、スモールスタートすべき企業にとってはむしろ推奨されるべきです。

何かが良くないのかを明確にしておくと、スモールスタートする必要があるにもかかわらず、予算が潤沢にある企業と同じ戦略を執ってしまうことが間違いなのです。

スモールスタートから、業界内でのシェアを上げ企業が成長した事例もあります。

それらの事例でも、この法則を知っているのと知らないのでは、途中の意思決定に大きな影響を及ぼしたと言えます。

なので、このような法則があることを知っておくことはスモールスタートで行う企業にとっても重要な視点なのです。

まとめ

今回は、ウェブ戦略に対する誤解についてその一部を理解して頂くため、ダブルジョパディ法則を紹介しました。

この理解があれば、やみくもにウェブ広告に片足を突っ込んだけでは、成果が出ないことが理解できるかと思います。
逆に、少しやってみたからといって可能性がないわけでもありません。

ご興味があれば、ぜひご相談ください。

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この記事を書いた人

代表取締役

小野瀬

ウェブマーケティング戦略コンサルタント。コンサル実績:月間1000万PV/問い合わせ数約6倍/売上10倍など。企業ブランドが発信すべきメッセージを企画し、広告/SEO/サイト改善を活用して実現する。ウェブ解析士マスター。

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